この記事の答え
吸水土のうは、袋の中の高吸水性ポリマーに水を吸わせて膨らませる、土のいらない土のうです。浅い浸水の初期の対策に向きます。選ぶときは「真水か海水か」「使い捨てか使い直すか」「何年置いておけるか」の3つを先に決めると、候補が絞れます。
吸水土のうとは
袋の中に高吸水性ポリマーが入っていて、水に浸すと数分で膨らみ、土のうと同じように積んで使えます。福井市は「高吸水性ポリマー(紙おむつなどに使用される)を使用した土のう」と説明し、公民館で配っています(福井市)。港区も、水に浸すと膨らむ市販の吸水性簡易土のうを土のうの代用品として紹介し、区民や区内の事業者向けのあっせんの品目に入れています(港区)。
考え方は古く、東京消防庁は1989年に、高吸水性樹脂で「吸水性ゲル水のう」を作り、建物への水の侵入を防ぐ都市型の水防工法として研究した報告を出しています(東京消防庁 消防科学研究所報26号)。
普通の土のうと何が違うか
いちばんの違いは、土砂がいらないことです。国土交通省の水防工法の資料では、長さ10mの積み土のうに、土のう袋200枚と土砂4.5㎥を使うとしています(国土交通省 大和川河川事務所「水防工法」)。
| 比べる点 |
普通の土のう |
吸水土のう |
| 中身 |
土砂を詰める |
袋の中のポリマーが水を吸う |
| 用意するもの |
土砂・スコップ・詰める人手 |
袋がすっかり浸かる容器と水 |
| 備蓄 |
土砂の置き場所が要る |
薄く軽い。比較ページの製品は吸水前1枚およそ100g〜1.3kg |
| 作る時間 |
詰めて縛る手間がかかる |
浸して約90秒〜10分(製品による) |
| 使ったあと |
土砂の処分が要る |
乾かすか脱水剤で水を抜いて捨てる |
注意したいのは、水をかけるだけでは十分に膨らまないことです。福井市は「水をかけるだけでは、膨らみません」と案内し、丸和ケミカルも深さ20cm以上の容器に浸すよう説明しています(丸和ケミカル 取扱説明書)。大雨の最中にあわてないよう、浸す容器と水を出す場所を先に決めておきます。
真水用と海水対応
多くの製品は真水(淡水)専用です。萩原工業・丸和ケミカル・アイリスオーヤマ・アイ・イー・ジェー・カンバラ・ブレインは、海水では使えない、または淡水で使うよう案内しています。入浴剤を混ぜた水でも膨らまないと書くメーカーもあります。
海水で使えると確かめられたのは、日水化学工業「アクアブロック」のNSDシリーズ(海水対応版)です。真水と海水の混ざった河口付近の水や、真水でも使えると案内しています(アクアブロック)。高潮や河口の近くで備えるなら、海水対応と明記された製品を選びます。
使い捨てと、使い直せる製品
比較ページに載せた製品の多くは1回限りです。日水化学工業のアクアブロックNDシリーズは、陰干しで小さく戻して2回以上使えますが、使い直すたびに吸水量は下がります。福井市も、乾かして使い直せるものの使うたびに吸水量が減り、膨らまなくなったら処分するよう案内しています(目安1〜2年)。
何年置いておけるか
未開封で置いておける期間は、メーカーが示しています。
| メーカー |
保管の目安(未開封) |
| キーストン |
製造日から4年(屋内の冷暗所) |
| 日水化学工業 |
約5年 |
| アイ・イー・ジェー |
7年 |
| 萩原工業 |
製造年月から7年(暗所) |
どれも直射日光と湿気を避けるのが条件です。丸和ケミカルは、出荷時のビニール袋から出したまま置いておかないよう注意しています。期限のない製品はないので、備蓄するなら入れ替えの年を決めておきます。
使ったあとの捨て方
水を吸ったポリマーは重いので、水を抜いてから捨てます。方法は2つです。
- 乾かす:天日に置いて水を飛ばす。製品により数日から4週間ほど。
- 脱水剤を使う:塩化カルシウムなどを混ぜると、ポリマーが水を離す。キーストンは脱水後に乾かして可燃ごみ、萩原工業は残った袋を燃えるごみとして案内しています。
何ごみになるかは自治体が決めます。福井市は「天日乾燥し、1袋5kg以下にして」燃やせるごみの日に出すよう案内しています。萩原工業は、大量に捨てる場合は都道府県知事の許可を受けた産業廃棄物処理業者に委託するよう書いています。
止水板との使い分け
止水板は、出入口などの開口部に取り付ける板です。漏れる水の量がJIS A 4716の等級(Ws-1からWs-6までの6段階)で示され、もっとも低いWs-1でも1時間に1㎡あたり200L以下です(東京都「止水板設置事例集」)。
土のうには、この等級がありません。積んで並べるので継ぎ目ができ、国土交通省の水防工法の資料も、継ぎ目から水が漏れないよう土を詰めて締め固めるよう書いています。吸水土のうも、積んで使う点は同じです。
| 比べる点 |
止水板 |
吸水土のう |
| 置き方 |
決まった開口部に取り付ける |
どこにでも積んで並べる |
| 漏れ |
等級で示される |
等級はなく、継ぎ目から漏れる |
| 向く所 |
守る出入口が決まっていて、漏れを抑えたい |
場所を決めずに備えたい。止水板のない入口をすぐふさぎたい |
| 備え方 |
開口に合わせて選び、工事や保管場所が要る |
薄く積んで保管。期限が来たら入れ替える |
止水板を付けた出入口の隙間や、止水板のない通用口に吸水土のうを足す、という組み合わせもあります。止水板の方式と等級は止水板のメーカー比較で比べられます。
どこまで防げるか
広島市は、土のうの代用品による方法は小規模な水害で、水深の浅い初期の段階で行うものとしています(広島市「土のうの代用品」)。アイリスオーヤマは浸水水位約20cmまでの初期の対策に勧め、萩原工業は完全に止水できる製品ではないと書いています。水位が上がりそうなときは、積む作業より避難を優先します。
選び方
- 使う水を決める:真水しか手に入らないか、海水が来る場所か。海水なら海水対応品に絞る。
- 何枚要るかを数える:出入口の幅と積む段数から数える。アイ・イー・ジェーのカタログでは、間口1,400mmで9枚・2段、2,100mmで21枚・3段の例がある。
- 重さと形を選ぶ:重いほど流されにくいが、運ぶのが大変になる。比較ページの製品は吸水後およそ10〜23kg(長尺・連結型は40〜80kg)。隙間なく積みたいなら箱型。
- 保管と入れ替えを決める:保管の目安(4〜7年)から入れ替えの年を決め、浸す容器と捨て方まで先に用意しておく。