この記事の答え
テント倉庫は、鉄骨の骨組に膜材を張った建物で、建築確認が要ります。平屋・延べ1,000㎡以下・軒高5m以下で倉庫に使うなら告示667号の「テント倉庫」、それを超える大きさや作業場に使うなら告示666号の「膜構造の建築物」として設計します。選ぶときは「告示667号に収まるか」「膜材の防火の区分と何年もつか」「申請と工期をどこまで任せるか」の3つを先に確かめます。
テント倉庫とは
鉄骨の骨組に膜材(テント生地)を張って、屋根と壁にした倉庫です。膜は光を通すので昼間は照明なしでも明るく、部材が軽いので基礎や工事が少なく済みます。柱のない広い平屋をつくりやすく、製品や資材の保管、物流の仮置き場、農産物の倉庫に使われます。
国は「膜構造の建築物のうち倉庫の用途に供する建築物」を「テント倉庫建築物」と呼び、構造の基準を平成14年国土交通省告示第667号で定めています。根拠は建築基準法施行令 第80条の2で、鉄骨造などの一般的な構造以外の建物は、大臣が定めた技術的基準に従うことになっています(建築基準法施行令)。
告示667号の条件
告示の第1には、テント倉庫として建てるための条件が並んでいます。
| 条件 |
内容 |
| 構造 |
鉄骨造の骨組に膜材料などを張り、張力を入れて屋根と壁にする |
| 用途 |
倉庫 |
| 階数 |
1(平屋) |
| 延べ面積 |
1,000㎡以下 |
| 軒の高さ |
5m以下 |
| 屋根の形 |
切妻・片流れ・円弧のどれか |
| 膜の留め方 |
けた行方向に1.5m以下の間隔で骨組に留める(構造計算で3m以下) |
骨組の柱の間隔は、張り間方向(間口)で8m以下が基本で、構造計算で確かめれば30m以下まで広げられます(第2第4項)。膜材料は厚さ0.45mm以上・1㎡につき400g以上・引張強さが幅1cmにつき400N以上などの基準があります(第2第2項)。風の力は、基準の風速に0.8以上を掛けた値(28m/s未満なら28m/s)まで下げて計算でき、その場合は出入口などに軽減したことを表示します(第6第2項)。
告示666号「膜構造の建築物」との境目
1,000㎡を超える、軒が5mより高い、倉庫以外に使う。このどれかに当たれば、告示667号の「テント倉庫」にはなりません。この場合は、平成14年国土交通省告示第666号の「膜構造の建築物」として設計します。
このページのメーカーでは、ハシマシート工業が「内部で人が作業する場合は666号に則した構造」と案内し、岸工業は666号なら荷捌き場・作業場など倉庫以外も可としています(用途地域によっては建てられない場合がある)。太陽工業の大型品 FLEX HOUSE-MEGA は間口30〜50m・床面積1,500㎡以下(保管物によっては3,000㎡以下)です。
666号は2024年6月に改正され(令和6年国土交通省告示第977号)、骨組膜構造の膜面の投影面積は、建物全体の合計の制限をなくし、骨組などで囲まれた部分ごとに1,000㎡以内とする形になりました(国土交通省 国住指第156号)。メーカーの案内には改正前の数字が残っていることがあるので、大きな建物は設計の段階で確かめます。
建築確認と審査の期間
テント倉庫は建築物なので、都市計画区域などで新しく建てるなら、大きさにかかわらず確認申請の対象です(建築基準法 第6条第1項)。倉庫は別表第一の特殊建築物で、200㎡を超えると審査の期間は35日以内、それ以下なら7日以内とされています(同条第4項)。
国の型式適合認定を受けた型式の建物は、確認の審査の一部が省かれます(同法 第6条の4・第68条の10)。ただ、このページに載せたメーカーで、テント倉庫の型式適合認定を公式に書いている会社はありませんでした。各社とも、1棟ごとに構造計算をして申請する形です。
申請をどこまで任せられるかは、メーカーで違います。
| メーカー |
公式の書き方 |
| 太陽工業 |
確認申請手続きのサポート・代行 |
| ハシマシート工業 |
地質調査・構造計算・申請用図面・申請書をそろえて申請代行 |
| 北信帆布 |
必要に応じて建築確認申請や関係機関への届け出を代行 |
| 満天 |
667号・666号とも経験があり、申請手続きを代行 |
| 岸工業 |
建築確認申請の取得業務の代行 |
| 今泉テント |
申請図面を作成し、特定行政庁・検査機関へ提出 |
| 第一テント商会 |
申請から完了検査まで一貫して対応 |
膜材の種類と防火
日本膜構造協会は、膜材料を次のように分けています(日本膜構造協会)。
| 区分 |
基布 |
防火 |
| A種膜材料 |
ガラス繊維 |
不燃材料 |
| B種膜材料 |
合成繊維など |
準不燃材料・防炎材料のものもある |
| C種膜材料 |
合成繊維 |
防炎材料 |
| テント倉庫用膜材料 |
合成繊維・ガラス繊維 |
防炎材料(ガラス繊維なら不燃材料もある) |
A種はガラス繊維に四フッ化エチレン樹脂などを塗った膜です。テント倉庫用膜材料は、4つの中で一番軽く、耐候性は一番下とされています。太陽工業の膜材一覧では、ポリエステル基布の塩ビ膜が防炎2級、ガラスクロス基布の膜が準不燃・不燃です。燃えやすい物を入れる倉庫について、満天は不燃膜材を勧め、協立工業は燃え抜け防止シートが要るとし、矢野テントは22条区域で可燃物を収納するときは天井にガラスクロスの燃え抜け防止膜が必要と案内しています。
膜の張り替えの目安は、ハシマシート工業が10〜12年、マルダイテントが15年前後、第一テント商会が10〜15年、ショーワテントが10年ほどです。骨組を残して膜だけ張り替えられます。
固定式・伸縮式・レンタルの違い
| 形 |
どう使うか |
載せた会社 |
| 固定式 |
基礎に固定して建てる。寸法と屋根の形を決めて申請する |
13社 |
| 伸縮式 |
骨組の足がレールやキャスターの上を動き、膜を蛇腹に畳む。縮めればクレーンで出し入れできる |
7社 |
| 大型の膜構造 |
667号の条件を超える建物を、666号で設計する |
3社 |
| レンタル |
決まった寸法を月単位で借りる |
2社 |
告示667号には、伸縮する部分(可動式膜面)の決まりもあります。骨組の柱はけた行方向に1.5m以下の間隔で立て、間口は8m以下(構造計算で20m以下)、膜にガラス繊維糸を使わない、足元のレールはJISのレールか同等以上のものにする、などです(第2第4項・第3第2項)。協立工業の伸縮式は、構造計算で張り間20mまでとしています。
ユニットハウス・コンテナハウス・プレハブとの使い分け
|
どんな建物か |
向いている使い方 |
| テント倉庫 |
鉄骨の骨組に膜を張った平屋 |
柱のない広い倉庫を、早く安く建てたいとき |
| ユニットハウス |
工場で鉄骨の箱を仕上げて運び、据える |
事務所・休憩所・守衛室など、人が過ごす小さな部屋 |
| コンテナハウス |
コンテナの形の鉄骨の箱を基礎に据え、つないだり積んだりする |
店舗・事務所・宿泊施設を箱の組み合わせで設計したいとき |
| プレハブ |
工場で作った部材を、現場で組み立てる |
箱の大きさに縛られずに、敷地に合わせた事務所・倉庫を建てたいとき |
どれも土地に置いて使えば建築物で、確認申請が要ります。テント倉庫は、柱のない数百〜1,000㎡の平屋をつくりやすいのが強みです。人が長く過ごす部屋が要るなら、ユニットハウスやコンテナハウスも並べて検討します。ユニットハウスはユニットハウスの比較、コンテナハウスはコンテナハウスの比較で比べられます。動かす予定があり車両として置きたいならトレーラーハウスの比較も見てください。
工期と価格の目安
現場の組み立ては短く、ハシマシート工業は100㎡で2〜3日・300㎡で3〜4日、今泉テントは500㎡以下で鉄骨約7日・膜約10日です。ただし設計・確認申請・製作を含めると、マルダイテントは確認申請を行う場合で2〜3か月程度、岸工業は成約から引き渡しまで約3か月+施工日数としています。
公的な相場の統計は見つかりませんでした。比較ページに載せた13社は、販売するテント倉庫の価格を公開していません。公開されている目安はレンタルだけで、ハシマシート工業の料金表では、12か月契約で間口10m×奥行10mが月60万円、間口15m×奥行30mが月126万円です(設置・撤去を含めた総額の月割りで、確認申請は含まず、税の表記はなし)。契約が短いほど月額は高く、1か月契約では間口10m×奥行10mで639万円です。
選び方
- 告示667号に収まるかを決める:平屋で延べ1,000㎡以下・軒高5m以下、しかも倉庫に使うか。外れるなら666号の膜構造で設計できるメーカーを選ぶ。
- 置く場所を確かめる:都市計画区域か、用途地域で倉庫を建てられるか、22条区域や防火地域か。積雪の多い地域なら屋根の勾配と積雪の条件も。
- 膜材を決める:防炎・準不燃・不燃のどれにするか。燃えやすい物を入れるなら、不燃の膜か燃え抜けを防ぐ内張りが要るかを確かめる。
- 形を決める:固定式か、クレーンで出し入れする伸縮式か、期間だけ借りるレンタルか。
- 見積もりの中身をそろえる:本体・基礎工事・地盤調査・構造計算と確認申請・運搬・オプション(扉・換気・照明)を分けて、同じ条件で比べる。張り替えの時期と費用も聞いておく。