この記事の答え
雨水貯留槽は、屋根や敷地に降った雨水をいったんためて、大雨のときに一度に流れ出る水を減らしたり、散水やトイレ、災害のときの水に使ったりする槽です。地下に埋めるプラスチック製の貯留材・コンクリート製の槽と、地上に置く雨水タンクがあります。地下に埋めるものは「上を何が通るか(T-25と土かぶり)」「ためるか、しみ込ませるか」「埋めたあと中をどう点検・清掃するか」の3つを先に決めます。
雨水貯留槽とは
屋根や駐車場に降った雨水を、そのまま下水道や川へ流さずに、いったんためておく槽です。特定都市河川浸水被害対策法は、雨水を一時的に貯留し、又は地下に浸透させる機能を持ち、浸水被害の防止を目的とする施設を「雨水貯留浸透施設」と定めています(特定都市河川浸水被害対策法 第2条)。
役目は大きく2つです。1つは、大雨のときに敷地から一度に流れ出る水を減らし、下水道や川があふれにくくすること。もう1つは、ためた水を使うことです。雨水の利用の推進に関する法律は、ためた雨水を水洗トイレや散水に使うこと、消火や災害のときに備えて確保しておくことを「雨水の利用」としています(雨水の利用の推進に関する法律 第2条)。
比較ページでは、次の3つの形に分けて並べています。
| 形 |
どんなものか |
大きさの目安(このページの製品) |
| プラスチック製 |
樹脂の部材を地下で組んで埋め、シートで包む |
高さは最大で約4m、埋設深さは最大で約6m |
| コンクリート製 |
鉄筋コンクリートの箱や柱・版を地下に並べてつなぐ |
内高は0.75mから、大きいものは8.0mまで |
| 地上の雨水タンク |
雨どいから取水して、そばのタンクにためる |
家庭用は80〜250L、事業所向けは1,000L |
プラスチック製の貯留材
国土交通省の手引き(2010年)は、地下の砕石のすき間に雨水をためてしみ込ませる施設について、砕石の代わりに空隙率90%以上のプラスチック製の貯留材を使う施設が増えているとしています(国土交通省「雨水浸透施設の整備促進に関する手引き(案)」)。
業界団体の公益社団法人 雨水貯留浸透技術協会は、プラスチック製の地下貯留浸透施設の技術指針(案)をまとめ、令和6年度に改訂しています。指針が前提にしている使い方は次のとおりです(雨水貯留浸透技術協会 技術指針(案)令和6年度改訂版)。
| 項目 |
指針の範囲 |
| 置き方 |
プラスチックの部材を現場で組み、平らに埋める |
| 土かぶり |
0.5〜2m(槽の上から地面までの土の厚さ) |
| 槽の高さ |
最大4m |
| 車の荷重 |
T-25(総重量25tの車、250kN)で強度を確かめる |
| 置く場所 |
校庭・公園・駐車場・緑地・宅地・歩道 |
| 範囲の外 |
車道、急な斜面、槽の底が平常時の地下水位より深くなる場所 |
協会は、メーカーの工法を審査する「雨水貯留浸透技術評価認定」を行っていて、このページのプラスチック製の製品は、どれもこの認定を受けています(評価認定の一覧で2026年10月9日に確認)。
主な製品の値は次のとおりです。土かぶりはT-25の場合の値です。道路の下に置けるかは製品で違い(下の「車が乗るか」)、土かぶりと埋設深さは品種や地表の荷重でも変わるので、各社の資料の条件で確かめます。
| 製品 |
空隙率 |
車の荷重 |
土かぶり |
最大の埋設深さ |
| 積水化学工業 クロスウェーブ |
最大95% |
T-25 |
0.5〜2.2m |
品種により2.8〜6.0m |
| タキロンシーアイ アクアブリック |
約95% |
T-25 |
0.5〜2.7m |
3.2m |
| アロン化成 雨太郎 |
96% |
T-25 |
0.5〜2.0m |
3.0m |
| 城東リプロン ハイドロスタッフ |
94〜95%以上 |
T-25 |
0.5〜2.6m |
4.8m |
| リス興業 リスレインスタジアムGT |
94.0%以上 |
T-25 相当 |
0.5〜3.4m |
5.4m |
| 天昇電気工業 テンレイン・スクラム |
94.0〜96.0% |
T-25 |
0.5〜2.1m |
4.1m |
| タキロンシーアイ レインセーブN |
93〜96% |
T-14まで |
0.5〜1.2m |
2.7m |
空隙率の読み方
空隙率(貯留率)は、槽の外形の体積のうち水をためられる空間の割合です。協会の指針は、外形から出した体積から、部材や点検孔の体積を差し引いて数えるとしています。たとえば外形が100㎥の槽で空隙率が95%なら、ためられるのは95㎥です。
同じ製品でも、段数や部材の組み合わせで変わります。積水化学工業のクロスウェーブは2段以下で94%、リス興業は側板を除いた値、センクシアは条件で変わると注記しています。カタログの最大値どうしではなく、計画する槽の大きさでの値を出してもらって比べます。
車が乗るか:T-25と土かぶり
T-25は、総重量25tの大型車の荷重です。タキロンシーアイは、T-25を「車両総重量25tまでの車両乗り入れが可能」、T-14を「14tまで」と説明しています。注意するのは次の3点です。
- 土かぶりが条件:どのメーカーもT-25の最小土かぶりを0.5mとしています。T-8(8t)なら0.3mまで浅くできる製品があります(アロン化成・城東リプロン・天昇電気工業)
- 道路の下は別:積水化学工業はクロスウェーブのT-25対応を「一般道路を除く」とし、アロン化成は雨太郎を道路の下・大型車専用の駐車場・車道には置けないとしています。協会の指針も車道を適用範囲外としています
- 工事中と完成後の重機:リス興業は、槽の上に工事の車両を入れるときは鉄板で養生し、クレーン作業や残土の仮置きは事前に検討するよう注意しています。センクシアは、アクアキャッチSSの上での50トン級クレーンの吊り込みを、土かぶり500mm以上・鉄板の養生を条件に認めています
浮き上がり
プラスチック製の槽は軽いので、施工中の雨や地下水で浮くことがあります。アロン化成は浮力から必要な最小土かぶりを計算し、地下水位が槽の基礎より高い所には置かないとしています。リス興業は、浮力の計算書をつくる道具を公式サイトに置いています。
コンクリート製の槽
工場でつくった鉄筋コンクリートの箱や柱・版を、敷地に並べてつなぎます。プラスチック製より大きく深い槽をつくれ、ヤマウのアクアポンドL型は内空高8.0m、鶴見コンクリートのスタンド型は7.0mまでです。反対に、松岡コンクリート工業のハニカムボックスは内高750mmから、ベルテクスのM.V.P.-Lightシステムは土かぶり0.1mからと、浅く計画できる製品もあります。
荷重は、車の区分ではなく「上載荷重10kN/㎡」で示す製品が多くあります。ベルテクスは公園・校庭・駐車場の下を想定し、道路の真下や建物の下は問い合わせ、松岡コンクリート工業も車輪の荷重に対応するときの最小土かぶりは問い合わせとしています。
容量は、空隙率の代わりに設置面積1㎡あたりの貯留量で示す会社があります(松岡コンクリート工業のハニカムボックスは0.698〜1.842㎥、ベルテクスのM.V.P.-Lightシステムは0.703〜2.331㎥)。
維持管理では、中に人が入れることが大きな違いです。ベルテクスは、槽の中に入って目で点検・清掃できることを樹脂製との違いに挙げ、M.V.P.システムは底を現場打ちにして勾配やピットを付け、泥を集めやすくしています。
地上の雨水タンク
建物のたてどいに取水器(集水継手)を付け、ホースでそばのタンクに屋根の雨水をためます。満水になると、雨どい側へ自動で流れる製品がほとんどです。
| 製品 |
容量 |
公式の価格 |
| タキロンシーアイ 雨音くん |
120・150・200L |
設計価格 50,880〜130,760円(税抜) |
| SANEI EC2010AS |
110・140・250L |
希望小売価格 33,000〜108,900円(税込) |
| SANEI EC2011S-1000L |
1,000L(ポンプ付き) |
希望小売価格 880,000円(税込) |
| コダマ樹脂工業 ホームダム |
110・250L |
公式に掲載なし |
| タニタハウジングウェア レインバンク |
150L(有効120L) |
公式に掲載なし |
| 三甲 雨水タンク200L |
200L |
公式に掲載なし |
置くときの注意として、各社が公式に書いていることは次のとおりです。
- 飲み水に使わない(コダマ樹脂工業・タニタハウジングウェア)
- 水圧がない:タキロンシーアイは、家庭用タンクには水道のような水圧がないので、ホースをつないで散水はできないとしています
- 重さと転倒:200Lのタンクは満水で200kgを超えます。タニタハウジングウェアの150Lは満水で約167kgです。転倒を防ぐチェーンや固定の部品を用意しているメーカーがあります
- 凍結:SANEIは、凍結が予想されるときはタンクと水栓の水を抜き、寒冷地では保温材を巻くよう注意しています
- 清掃:タキロンシーアイは、集水継手とタンクの点検清掃を6か月に1回を目安にしています
- マンション:SANEIは、マンションの外壁と雨といは共有物なので、個人の判断では工事できないと書いています
置く義務がある場合
特定都市河川の流域
特定都市河川浸水被害対策法は、特定都市河川の流域で、宅地等以外の土地を宅地にしたり、舗装したりする行為を「雨水浸透阻害行為」とし、1,000㎡以上なら都道府県知事等の許可を受けるよう定めています(条例で500㎡まで下げられます)。許可を受けるには、増える雨水の流出を抑える対策工事が要り、雨水貯留浸透施設がその代表です(特定都市河川浸水被害対策法 第30条・同法施行令 第6条)。
対策工事で置いた雨水貯留浸透施設は、あとから埋めたり、上に建物を建てたりするのにも許可が要ります(同法 第39条)。
下水道の浸水被害対策区域
下水道法 第25条の2は、下水道の整備だけでは浸水を防ぎにくい区域を自治体が条例で「浸水被害対策区域」と定め、排水設備に雨水をためる・しみ込ませる機能を求める基準をつくれるとしています(下水道法)。
自治体の要綱や開発の指導
法律の義務がなくても、開発の許可や自治体の要綱で流出抑制の施設を求められることがあります。国土交通省の事例集では、札幌市が3,000㎡を超える大規模な施設に要綱で雨水の流出抑制を求め、平成23年度から令和5年度までに約460の施設が協力しています(国土交通省 雨水貯留浸透施設整備に係る事例集)。
補助と固定資産税の特例
特定都市河川の流域や浸水被害対策区域で、民間事業者などが雨水貯留浸透施設を置くときは、施設の設置と管理の計画(雨水貯留浸透施設整備計画)をつくり、都道府県知事等や下水道管理者の認定を受けられます(特定都市河川浸水被害対策法 第11条、下水道法 第25条の10)。
| 支援 |
内容 |
| 補助 |
国や地方公共団体が、認定計画の施設の設置費の一部を補助できる。特定都市河川浸水被害対策法の施行令は、国の補助の額を設置費の2分の1としている |
| 固定資産税 |
認定計画に沿って置いた施設の課税標準を、6分の1〜2分の1の範囲で市町村の条例が定める割合にする(参酌基準は3分の1)。適用期限は令和9年3月31日 |
出典:特定都市河川浸水被害対策法施行令 第5条・国土交通省「雨水貯留浸透施設に係る課税標準の特例措置」
どちらも、設置の前に計画の認定を受けることが条件です。
雨水の利用の推進に関する法律は、地方公共団体が雨水タンクの設置や、不要になった浄化槽を雨水の貯留に転用することに助成するよう努めるとしています(第15条)。多くの区市町村が、雨水タンクの助成をしています。
| 自治体 |
対象 |
助成 |
| 東京都大田区 |
大型雨水タンク(500L以上) |
費用の2分の1、30万円まで |
| 東京都大田区 |
小型雨水タンク(500L未満) |
費用の2分の1(個人は3分の2)、1基4万円まで |
| 東京都墨田区 |
雨水タンク |
費用の2分の1、5万円まで |
| 静岡県静岡市 |
雨水貯留タンク(総容量400L以上) |
設置費の3分の2、6万円まで |
| 静岡県静岡市 |
不用になった浄化槽の転用 |
設置費の3分の2、1基10万円まで |
出典:大田区・墨田区・静岡市
大田区と静岡市は、交付決定や申請の前に買ったものを対象にしていません。大田区は、個人のほか法人も申請できる形で、国・地方公共団体や、法令・条例で設置を義務づけられている人などを対象外にしています。
点検と清掃
地下の槽は、埋めたあと中が見えません。各社と協会の指針に共通する考え方は次のとおりです。
- 入れない:流入する前にスクリーン・沈砂・フィルターで土砂やごみを止めます(タキロンシーアイ・積水化学工業・アロン化成)
- 見る:点検口から水位と堆砂を見ます。協会の指針は、点検孔を地上から槽の底まで見通せるようにし、施設台帳と点検の記録を残すよう求めています
- 出す:たまった土砂は点検口からバキュームで吸い出します。城東リプロンや天昇電気工業は土砂を1か所に集める仕組みを、トーテツのアクアパレスやエバタのパネケーブは人が槽の中を歩いて清掃できる構造を持ちます
人が槽に入るときは、酸素の濃度と有毒ガスを確かめ、照明と換気を用意します(明治ゴム化成・トーテツ)。協会の指針は、校庭や公園などに置く場合、車の重さの制限・クレーン作業や焚き火・バーベキューなどの火気の禁止を示す表示を置くことが望ましいとしています。
ためた雨水の使い方
国土交通省の「雨水の利用の推進に関する基本方針」は、使い道として水洗トイレ・散水・清掃・消火や災害のときの水を挙げる一方、処理した雨水も通常は飲用には適さないとしています。雨水を送る設備は、飲料水の設備と直接つながないよう専用のものにし、だれでも使える水栓では子どもの誤飲・誤用がないよう管理を考えるよう求めています(国土交通省 告示第311号)。
屋根の雨水は比較的きれいですが、降り始めの雨は鳥のふんや油などで汚れやすく、基本方針は必要に応じて初期の雨水を除くよう書いています。タキロンシーアイの集水継手には、初期の雨水を逃がす穴があります。
止水板・排水ポンプとの関係
雨水貯留槽は、敷地に降った雨をためて、外へ一度に流れ出る水を減らす対策です。自分の建物を直接守るものではなく、まち全体の下水道や川にかかる負担を減らして、浸水を起こしにくくします。
建物そのものを守るには、外から入る水を止める止水板と、入った水や低い所にたまった水を外へ出す排水用水中ポンプを組み合わせます。雨水貯留槽で流れ出る水を減らし、止水板で入る水を止め、ポンプで入った水を出す、と役割を分けて考えます。
選び方
- 義務と支援を先に確かめる:特定都市河川の流域か、浸水被害対策区域か、開発の指導の対象かを、河川と下水道の担当課に確かめます。補助や固定資産税の特例を使うなら、設置の前に計画の認定を受けます
- 必要な容量と使い道を決める:流出抑制の量(自治体の基準で決まる)と、ためた水を使うかどうか。使うなら貯留型にし、ポンプと専用の配管を考えます
- 地盤と地下水位を調べる:浸透型にするなら地盤が水を通すか、地下水位が高ければ浮き上がりと防水を確かめます
- 上の使い方で荷重と土かぶりを決める:駐車場ならT-25と土かぶり0.5m以上、大型車や重機が乗るなら高強度の型や、コンクリート製を比べます。道路の下は個別の相談です
- 点検・清掃の方法を決める:前処理・点検口の数と位置・人が入れるかを、図面の段階で決めます
- 見積もりの中身をそろえる:部材・シート・掘削・残土処分・点検口・前処理の施設を分けて、同じ容量と条件で比べます。公式に価格を出しているのは一部のメーカーだけです