この記事の答え
排水用水中ポンプは、水に沈めて、たまった水をホースで外へ出す機械です。選ぶときは「何の水を抜くか(泥水・汚水・床の残水)」「どこまで水を抜くか(最低水位)」「電源と周波数」の3つを先に決めます。止水板や土のうは水を完全には止めないので、入った水を出すポンプと組み合わせて備えます。
排水用水中ポンプとは
ポンプとモーターがひとつになっていて、本体ごと水の中に沈めて使います。吸い込んだ水を、つないだホースで外へ送り出します。日本産業規格のJIS B 8325「設備排水用水中モータポンプ」は、水槽などにつり下げたり置いたりして、建物などから出る汚水・雑排水を送る、口径32〜150mmのポンプを定めています(日本規格協会 JIS B 8325:2024)。
建物に据え付けて使う大きな排水ポンプのほかに、持ち運んで使う小型機があります。比較ページでは、浸水の後始末や工事現場で使いやすい、単相100V(家庭用のコンセント)で動く型式を中心に並べています。
用途の3つの区分
| 区分 |
抜く水 |
特徴 |
| 工事・一般排水用 |
雨水・湧水・砂や泥のまじった水 |
砂による摩耗に強いゴムやウレタンの部品。水位が40〜90mmほどまで下がると吸えなくなる製品が多い |
| 汚水・汚物用 |
汚水・柔らかい固形物のまじった水 |
異物の通過径が大きい(掲載した製品で7〜35mm)。フロートで自動運転する型式が多い |
| 残水・低水位用 |
床や槽の底に残った浅い水 |
1〜5mmほどまで吸い取れる。吸い始めには約10〜40mmの水位が要る型式がある |
浸水した半地下や車庫の水を出すなら工事・一般排水用、汚れた水や床下の水なら汚水・汚物用、水が引いたあとの床を乾かす前の水抜きなら残水・低水位用が向きます。たまる水の量が多い場所では、工事・一般排水用で大半を出し、残水・低水位用で仕上げる、という2台の組み合わせもあります。
異物の通過径は、変形する柔らかい物を前提にした値で、砂利などは含まないと書くメーカーもあります(川本製作所 WUP4形)。
吐出し量と揚程の読み方
吐出し量は、1分間に出せる水の量です。メーカーの仕様表は「全揚程8mのとき0.1㎥/min」のように、ある高さ(揚程)まで水を上げたときの値で書かれていることが多く、高く上げるほど出る水は少なくなります。最大の吐出し量や最高揚程を数字で書くメーカーと、性能曲線のグラフだけで示すメーカーがあり、比較ページでは公式の値を何mの揚程での値かを添えて載せています。
量の目安を計算してみます。床面積10㎡の半地下に深さ10cmの水がたまると、10㎡×0.1m=1㎥(1,000L)です。1分間に100Lを出すポンプなら、単純計算で約10分です。実際には、ホースを上げる高さや長さで出る水が減り、雨が降り続けば水は入り続けます。
どこまで水を抜けるか(最低水位)
水中ポンプは、水位が下がると空気を吸い込んで水を送れなくなります。比較ページの「最低水位」は、メーカーが示す、運転を続けられる最も低い水位(または自動運転で止まる水位)です。
| 型式(メーカー) |
最低水位 |
| 50EZQ5.45S(荏原製作所) |
1mm |
| S-500LN(寺田ポンプ製作所) |
1mm以下 |
| BRL400S(新明和工業) |
1〜2mm |
| LSR2.4S(鶴見製作所) |
5mm |
| 50EZ5.45S(荏原製作所) |
40mm |
| HS2.4S(鶴見製作所) |
90mm |
残水用でも、吸い始めるには深い水位が要る型式があります。寺田ポンプ製作所のS-500LNは動き始めに40mmの水位が要り、それより浅いところから始めるときは吐出し口から水を入れて運転するよう案内しています(寺田ポンプ製作所 S形 取扱説明書)。床の水を最後まで抜くなら、水が集まる一番低い所にポンプを置きます。
自動運転(フロート・電極)
水がたまると動き、減ると止まる型式があります。浮き(フロート)の上がり下がりで水位を見る型と、電極が水に触れているかで見る型があります。無人の地下ピットや、夜間に水が入るおそれのある場所では、自動運転の型式が向きます。
櫻川ポンプ製作所は、油・海水・浮遊物の多い水では、センサー式よりフロート式のほうが確実に動くと案内しています(櫻川ポンプ製作所 UOYシリーズ)。自動運転の型式は、水位がある高さまで下がると止まります(掲載した製品で停止水位70〜155mm)。床の水を最後まで抜く用途には、残水・低水位用を使います。
電源の注意
周波数(50Hz・60Hz)
使う場所の電気の周波数に合わせます。荏原製作所の取扱説明書は、50Hz用を60Hzで使うと過大な圧力や過負荷で壊れるおそれがあり、60Hz用を50Hzで使うと性能が落ちるとしています(荏原製作所 EZQ型 取扱説明書)。50Hz・60Hzで共通の型式と、別の型式に分けている製品があるので、本体の銘板で確かめます。
漏電遮断器とアース
労働安全衛生規則 第333条は、事業者が、水などで濡れている場所で移動式・可搬式の電動の機械を使うときは、感電防止用の漏電遮断装置を接続するよう定めています(e-Gov法令検索)。メーカーも、ポンプ専用の漏電遮断器を付け、アースを確実に取るよう求めています。寺田ポンプ製作所はAC100V・15A・感度電流15mAの漏電遮断器を専用で付け、定格15A以上のコンセントを単独で使うよう書いています。人がいる水の中では使いません。
発電機
停電しているときは発電機で動かします。必要な容量は、川本製作所がポンプ1台につき3倍以上(川本製作所 DUG2形 取扱説明書)、寺田ポンプ製作所が消費電力の3〜5倍を目安にしています。荏原製作所の50EZ5.45Sは1台につき1.5kVA以上です。発電機の周波数もポンプに合わせます。
延長コードと空運転
ケーブルの延長は、メーカーで扱いが違います。荏原製作所はEZQ型でケーブルの延長接続をしないよう求め、寺田ポンプ製作所はS形で、太さ0.75㎟なら15m、1.25㎟なら25mまでとしています。工進は、細い延長コードや容量の小さい発電機で電圧が下がると、保護装置が働いて止まることがあるとしています。
水のない所で回す空運転もしません。川本製作所は工事用のDUG2形を空気中で5秒以上運転しないよう書いています。
止水板・吸水土のうと組み合わせた浸水対策
止水板も土のうも、水を完全には止めません。止水板の止水性能(JIS A 4716)は、1時間に1㎡あたり漏れる水の量で6段階の等級が決まっていて、最も低いWs-1は200L以下です(東京都「止水板設置事例集」)。国土交通省・経済産業省の「建築物における電気設備の浸水対策ガイドライン」の事例集は、長く浸水するおそれがある場合は、水密扉の浸水防止性能に応じて十分な余裕をもった排水能力のポンプを置き、外へ排水するとしています(建築物における電気設備の浸水対策の事例集(原案))。
備えの流れは、次の3段です。
- 入れない:出入口に止水板を付ける。止水板のない入口には吸水土のうを積む
- 入った水を出す:止水板や土のうの継ぎ目から漏れた水、雨で床にたまった水を、工事・一般排水用か汚水・汚物用の水中ポンプで出す。無人になる場所は自動運転の型式にする
- 残った水を抜く:水が引いたら、残水・低水位用で床の水を抜き、清掃と乾燥を早く始める
東京都下水道局は、地下室や半地下の建物に、下水の逆流を防ぐ逆流防止弁付きのポンプ施設や、雨水の流れ込みを防ぐ止水板などの対策を先に講じるよう呼びかけています(東京都下水道局)。ポンプで出した水の行き先と、ホースの先の置き方も先に決めておきます。寺田ポンプ製作所は、ホースの先が水中に入っていると、止めたときにサイホンの働きで水が逆流するとして、先を水面より上に固定するよう書いています。
自治体の貸し出し・国の排水ポンプ車との違い
| 比べる点 |
自前の水中ポンプ |
自治体の貸し出し |
国の排水ポンプ車 |
| 規模 |
1分間に数十〜数百L |
久留米市の例で1分間に約110L |
1分間に30㎥(30,000L) |
| 使える時 |
浸水が始まったその場で |
水害のあと、窓口で借りる |
大雨で浸水した地域に出動する |
| 使う所 |
自分の建物の地下・ピット |
浸水した家屋の床下など |
河川や地域の浸水 |
福岡県久留米市は、水害で家屋が浸水した人に、床下の水を抜く手持ちサイズのポンプとホース(10m)を貸し出しています(久留米市)。東京都目黒区は、令和7年度中に貸し出し用の排水ポンプを区内に10台程度置くとしています(目黒区)。国土交通省の排水ポンプ車は、京浜河川事務所の車両で総排水量30㎥/minです(京浜河川事務所)。
どれも台数に限りがあり、自分の建物のために待機しているものではありません。地下室・半地下・地下の電気室のように、すぐ水が入る場所を持つ建物は、自前のポンプを用意しておくと、浸水が始まったその場で動かせます。
選び方
- 抜く水を決める:雨水・泥水なら工事・一般排水用、汚水や固形物がまじるなら汚水・汚物用(異物の通過径を見る)、床の残水なら残水・低水位用。
- どこまで抜くかを決める:床を乾かすところまで自分でやるなら、最低水位1〜5mmの残水・低水位用を足す。
- 量と高さを見積もる:たまる水の量と、ホースで上げる高さ・長さから、吐出し量の足りる型式を選ぶ。
- 電源をそろえる:周波数(50Hz・60Hz)を合わせ、専用の漏電遮断器とアースを用意する。停電に備えるなら、容量に余裕のある発電機と燃料も。
- 置き場と点検を決める:無人の場所は自動運転の型式にする。日立産機システムは、休止の長い予備機を月2回程度、5分以上運転するよう勧めている。