この記事の答え
排水処理装置は、工場から出る排水の汚れを取り、決まった水質にしてから外へ出したり、もう一度使ったりするための装置です。選ぶときは「何の汚れを取るか(濁り・重金属・有機物・油・酸やアルカリ)」「1日にどれだけ流すか」「どこへ出すか(川や海か、下水道か)」の3つを先に決めます。汚れの種類で方式が決まり、出す先の基準で、どこまできれいにするかが決まります。
排水処理装置とは
工場の排水には、洗浄やめっき、食品の加工から出る濁り・重金属・有機物・油・酸やアルカリが混じります。排水処理装置は、これを凝集剤・微生物・浮力・中和剤などで取り除き、排水基準に合う水にしてから外へ出します。処理した水を洗浄水や冷却水に戻して使う工場もあります。
ひとつの工場で、1台だけで済むことは多くありません。たとえば「油水分離 → 中和 → 凝集沈殿」「中和 → 生物処理」のように、取りたい汚れの順に装置をつなぎます。
ろ過装置・殺菌装置との違い
このページは、汚れを「別のものに変えて取る」装置を扱います。凝集剤でかたまりにする、微生物に食べさせる、油を浮かせる、pHを戻す、のどれかです。
ろ過装置は、砂・繊維・ろ紙・カートリッジなどのろ材に液を通して、粒をこし取る装置で、クーラントや冷却水を繰り返し使うときや、処理した排水の仕上げに使います。殺菌装置は、紫外線・熱・薬液で菌を減らす装置です。排水処理のあとにろ過で濁りを仕上げたり、殺菌してから再利用したりと、組み合わせて使います。汚泥を絞る脱水機やフィルタープレスも、排水処理の後ろにつなぐ別の装置なので、このページの表には入れていません。
4つの方式
凝集沈殿・加圧浮上
排水にPAC(ポリ塩化アルミニウム)などの凝集剤と高分子凝集剤を入れてかき混ぜ、細かい濁りや重金属をかたまり(フロック)にします。かたまりを槽の底に沈めるのが凝集沈殿、細かい泡をつけて水面に浮かせてかき取るのが加圧浮上です。めっきや金属加工の排水、塗装の排水、食品工場の前処理に使います。薬品代と、出てくる汚泥を捨てる費用がかかり続けます。このページでは、トーケミの凝集沈殿ユニット(1.5〜6.0m³/h以下)と加圧浮上分離ユニット(1.0〜10.0m³/h以下)、シーズのCED・PFD、壽化工機のKAF、三菱重工パワー環境ソリューションのMSAF(50〜1000m³/h)を並べています。
生物処理(活性汚泥・MBR)
槽に空気を送り、微生物に排水の有機物(BOD・COD)を食べさせて分解します。食品・飲料の工場のように、油脂やでんぷん、糖が多い排水に向きます。微生物と水を沈殿で分けるのが活性汚泥、膜でこして分けるのがMBR(膜分離活性汚泥法)で、MBRは沈殿槽がいらないぶん場所を小さくでき、きれいな水がとれます。ダイキアクシスのSYX型は小さな食品工場向けの接触酸化で、放流水質はBOD 20mg/L以下です。MBRには、クボタの液中膜ユニット、三菱ケミカルアクア・ソリューションズのDiaFellow AM、明電舎のセラミック平膜ユニットがあります。微生物は生き物なので、急に濃い排水や薬品が来ると弱ります。
油水分離
油が水より軽いことを使って、槽の中で油を浮かせて分け、上の油をすくって取ります。細かく混じった油は、板を何枚も重ねた所を通して油の粒を大きくしたり、吸着材に吸わせたりします。部品の洗浄排水、機械加工や整備の工場、食品工場の排水に使います。洗剤で乳化した油は浮きにくいので、日建のNKSEのように限外ろ過膜でこして分ける装置や、加圧浮上を使います。
中和装置
酸性やアルカリ性の排水に、苛性ソーダや硫酸などの中和剤、または炭酸ガスを入れ、pH計の値を見ながら決まったpHに合わせます。めっき・酸洗い・洗浄の工程や、コンクリートの製品工場の排水に使います。炭酸ガスはアルカリの排水だけに使え、硫酸や塩酸を置かずに済みます。トーケミは、炭酸ガスは入れ過ぎてもpHが下がり過ぎず、塩の濃さも上がらないと書いています(トーケミ CPC型)。薬液式ではタクミナのNPKとトーケミのTPC型、炭酸ガス式ではタクミナのNACとトーケミのCPC型を並べています。
排水基準から逆算する
工場の排水を川や海へ出すときは水質汚濁防止法、下水道へ流すときは下水道法の決まりを守ります。
- 水質汚濁防止法 第3条で国が排水基準を決め、都道府県は条例でもっと厳しい基準(上乗せ排水基準)を決められます。第12条で、排水基準に合わない水を出すことを禁じています(e-Gov 水質汚濁防止法)
- 下水道法 第12条の2で、特定事業場から下水道へ流す水も、決まった基準に合わせるよう定めています(e-Gov 下水道法)
国の一般排水基準では、pHは海域以外へ出す水で5.8以上8.6以下、SS(浮遊物質量)は200mg/L(日間平均150mg/L)、BODは160mg/L(日間平均120mg/L)、ノルマルヘキサン抽出物質は鉱油類5mg/L・動植物油脂類30mg/Lです。pH・BOD・SS・油などの項目は、1日の平均的な排水の量が50m³以上の工場・事業場に当てはまります(環境省 一般排水基準)。六価クロムや鉛などの有害物質は、排水の量にかかわらず当てはまります。
自治体の上乗せ基準や下水道の受け入れ基準は、場所によって違います。装置を選ぶ前に、工場のある自治体と下水道の担当に、守る項目と数字を聞いておきます。
見積もりの前に用意するもの
- 排水の量(1日に何m³か、1時間の最大)と、出る時間帯
- 排水の中身:pH・SS・BOD(COD)・油・重金属の分析値。無ければ、どの工程から出る排水か
- 出す先(川・海・下水道)と、守る基準(自治体の上乗せ基準・下水道の基準)
- 置ける場所の広さと、屋外か屋内か。電源(三相200Vか)
- 出てくる汚泥や油を、だれがどう引き取るか