この記事の答え
非常用トイレは、水洗トイレが使えないときに使う災害用のトイレです。会社や避難所で備えるなら、まず人数に1日5回と3日をかけた回数の携帯トイレを置き、便器が使えない場所の分を組み立て式で足し、屋外の長い避難にはマンホールトイレや仮設トイレを組み合わせる、という順に考えると決めやすくなります。
非常用トイレとは
地震で水道や電気が止まったり、建物の配管や下水道が壊れたりすると、見た目に無事な水洗トイレでも水を流せなくなります。内閣府の「避難所におけるトイレの確保・管理ガイドライン」(令和6年12月改定)は、災害用のトイレとして携帯トイレ・簡易トイレ・仮設トイレ・マンホールトイレなどを挙げ、市町村に備蓄や確保の計画を作るよう求めています(内閣府)。
比較ページでは、メーカーが自社の製品として出しているものを、次の4つの方式に分けて並べています。
| 方式 |
使い方 |
要るもの |
| 携帯トイレ |
洋式便器や便座に袋をかけ、凝固剤や吸収シートで固める |
使える便器(個室)と袋・凝固剤 |
| 組み立て便座型 |
段ボールなどの箱を便座にして、袋と凝固剤で使う |
置く場所と袋・凝固剤 |
| 自動密封型 |
本体が1回ごとに袋を熱で閉じる |
本体・専用の袋(電源が要る製品も) |
| マンホールトイレ |
下水道につながる管の上に、便座と囲いを置く |
前もっての工事と、流すための水 |
何回分を備えるか
内閣府のガイドラインは、トイレの平均的な使用回数を1日5回とし、携帯トイレの1日分を、最大想定避難者数に5回をかけた数として出し、まず3日分を目標にするよう示しています。東京都も、1人1日5回を3日間で15回分ほど備えるよう勧め(東京都総務局総合防災部)、神奈川県は、5回に家族の人数と最低3日分をかけた数を目安に、できれば7日分としています(神奈川県)。
| 帰れない人の数 |
3日分の回数 |
100回分の箱で |
| 10人 |
150回分 |
2箱 |
| 50人 |
750回分 |
8箱 |
| 100人 |
1,500回分 |
15箱 |
| 300人 |
4,500回分 |
45箱 |
会社なら、帰宅困難者として社内にとどまる社員と、受け入れる来客の数で数えます。100回分の箱は、比較ページの製品でおよそ2.4〜6.5kgです。
トイレはいくつ要るか
回数とは別に、同時に使える便器の数も足りるかを見ます。内閣府のガイドラインは、スフィア基準をもとに、災害発生当初は避難者50人あたり1基、避難が長くなる場合は20人あたり1基、女性用と男性用は3:1を目安にしています。この数には、建物のトイレの個室(携帯トイレをかけて使う)と災害用のトイレの両方を含めます。
個室が足りない、便器が壊れた、という場所には、組み立て便座型を足します。
保存期間と入れ替え
メーカーが示す保存の目安は、製品によって7〜15年です。
| メーカー |
保存の目安 |
| ニード |
15年(品質保証期限) |
| セットアップ横浜・まいにち・無臭元工業・スターライト工業 |
10年 |
| 総合サービス |
保証7年 |
| 日本セイフティー(ラップポン) |
専用の消耗品が未開封で5年保証 |
ケンユーと香彩堂の製品は、年数の記載を公式で確かめられませんでした。総合サービスは、7年を過ぎても使えるが固まる力は少しずつ落ちると案内しています。期限が近い分は防災訓練で実際に使ってみて、袋のかけ方や捨て場所を確かめる機会にすると、無駄になりません。
凝固剤と吸収シート
携帯トイレには、粉の凝固剤を袋の中にふりかける型と、袋の中に吸収シートが入っている型があります。掲載している製品の多くは凝固剤の型で、総合サービスの「サニタクリーン」が吸収シートの型です。
固まるまでの時間を公式に出しているメーカーは少なく、スターライト工業が自社試験で約5秒(水温25℃・300mL)と示しています。1回にどれだけの量を固められるかを公式に書いているメーカーは、確かめた範囲ではありませんでした。
日本トイレ研究所は「携帯トイレに関する規格 Ver.1.0」を定め、構造・吸収性能・表示(必須)と防臭性能(任意)を評価した製品のリストを公開しています(日本トイレ研究所)。選ぶときの目安のひとつになります。
使ったあとの捨て方
固めた袋は、口を結んで自治体の区分でごみに出します。セットアップ横浜・香彩堂・無臭元工業・和弘プラスチック工業は可燃ごみとして出すよう案内し、出し方は自治体のルールに従うよう書いています。スターライト工業は、トイレや下水に流さないよう注意しています。
災害のあとは、ごみの収集が止まることがあります。内閣府のガイドラインも、使用済みの携帯トイレを長く避難所に留めないよう、定期的な回収を手配するよう求めています。固めた袋をためておく、ふた付きの箱や置き場所を先に決めておきます。
マンホールトイレの方式
マンホールトイレは、下水道につながる管やマンホールの上に便座と囲い(テントなど)を置いて使うトイレです。国土交通省の「マンホールトイレ整備・運用のためのガイドライン」(2025年版)は、地下の部分(下部構造)を次のように分けています(国土交通省)。
| 方式 |
仕組み |
使える条件 |
| 本管直結型 |
下水道の本管にそのまま流す |
下流の下水道と処理場が無事なこと |
| 流下型 |
管にためた水で、まとめて流す |
同上。流すための水と送水の手段 |
| 管路内貯留型 |
管の中にためて、弁を開けて流す |
処理場が被災しても一定期間使える。水が要る |
| 流下貯留型 |
下流に設けた槽にためる |
同上。ためられる量に限りがある |
同じガイドラインは、マンホールトイレの必要数を50人に1基を目安とし、全国で710の地方公共団体が約49,000基を整備している(令和6年度末)としています。国の交付金(下水道総合地震対策事業)の対象になるのは、敷地0.3ha以上または想定避難者200人以上の防災拠点・避難地に整える下部構造で、補助率は2分の1です。
比較ページに載せたメーカー(アロン化成・クボタケミックス・積水化学工業・前澤化成工業)が出しているのは、主にこの下部構造です。便器や囲いは別に組み合わせます。
選び方
- 人数と日数を決める:帰れない人の数に1日5回と3日をかけて、携帯トイレの回数を出す。
- 個室の数を数える:50人に1基(長くなれば20人に1基)に足りるか。足りなければ組み立て便座型を足す。
- 保存期間と入れ替えを決める:保存の目安(7〜15年)から入れ替えの年を決め、期限の近い分は訓練で使う。
- 捨て方と置き場を決める:固めた袋のごみの区分と、収集が止まったときの置き場所。
- 屋外の備えを考える:避難所の敷地なら、マンホールトイレの方式(流す型か、ためる型か)と、流すための水の確保を、下水道の担当と相談して決める。